'06年02月20日(月)

睡眠薬強盗4

マニラ市の警察連絡先

前回までは、エドの知り合いがマニラで睡眠薬強盗の被害にあったときの体験談でしたが、今日はその当日のエドの体験談です。マニラに来た知り合いに、仕事があるから自分は同行できないけれど車と運転手を使ってもらい、リサール公園やイントラムロスを観光してもらうことにしました。昼前に出発したことは知っていたので、それほど見る所もないし、多分5時前には帰ってくるだろう。そう思っていたので、運転手から4時頃に「6時にイントラムロスの大聖堂に迎えに来るように言われたので戻るのが遅くなります。」という連絡をもらった時「なんでそんなに遅くなるのだろう?」とちょっと思ったことは確かです。

ただ仕事中だったので、いちいち電話をかけてなんで遅くなったりするのか確認しませんでした。会社の帰りは別に車がなくてもいいので、電話して早く帰れと言っているようにとられるのも悪いなと思ったので。ただ、もしかしたらこの時点ですぐに電話をかけて知り合いと話せれば、状況は違ったかも知れません。

次にエドが運転手から連絡をもらったのは、6時半過ぎ。「大聖堂に来ていますが、エドさんの知り合いの姿が見えません。」電話もないし嫌な予感がしました。ただ、その時点では大聖堂の場所が分からなくて迷子になっているとか、違う場所を大聖堂だと思ってそこで待っているのかも知れないので、運転手には引き続き大聖堂の前にいてもらい電話をかけて状況を聞くことにしました。

何度かけても呼び出し音は鳴るものの電話にでません。ただ知り合いに貸した電話の呼び出し音が小さくてカバンの中に入れていると良く聞こえないと言う話も聞いていたので、何度もかけて呼び出します。

この時点でとても嫌な予感がしたのですが、携帯電話の電源が切られていないので、一縷の望みを託して電話をかけ続けること30分以上。やっとつながりました。

「どこにいるんだ?」と聞いたら「今日出会った人の家に来ている。」というのでエドは睡眠薬強盗だとピンと来ました。昨日も書いたとおり「そこで絶対に何も食べるな!飲むな!!!」とエドは言ったのですが知り合いはノンビリと「もう一緒に晩御飯食べたよ。帰りたいんだけど、危ないからって帰してもらえないんだよ。」

今いる場所を知り合いは知らないというのでその家の人に聞くように言うと「エドさんと話したいって言ってる。」と電話を替わられてしまいました。エドは睡眠薬強盗主犯推定年齢45才のジーナと話すことになりました。「睡眠薬強盗だろう!」なんて言って電話を切られて知り合いに危害でも加えられたらたまりません。

「知り合いがご馳走になったみたいでありがとう。もう夜だし知り合いを帰して欲しいんだけど。」

「そうしたいんだけどもう真っ暗だし一人で帰るのも危ないから…。」とジーナ。

「運転手が迎えに行くから場所を教えて。彼はイントラムロスにいるから。そこはイントラムロスの近く?」

「イントラムロスからは遠いのよ。カマゴン通りを知ってる?」

エドは抱えていた地図でカマゴン通りを探します。なんだ、マカティじゃない。本当ならばエドの家からも結構近くです。「運転手が迎えに行くからカマゴン通りの何番地か教えて。」

「えっ、何?もしもし…」

住所を聞いたとたん電話を切られました。それ以降は何度かけても圏外のアナウンスになったので、電源を落としたかSIMカードを外したのでしょう。これは完璧に睡眠薬強盗です。

睡眠薬強盗が、本当の住所を言うはずもありませんが、唯一の手がかりなので運転手にはカマゴンストリートに移動してもらいそこで知り合いを見かけたら拾ってもらうことにしました。

睡眠薬強盗は普通被害者に危害を加えないのですが、これまで最悪のケースでは死者も出ています。死ななくても寝込んだところをマニラの路上などに放置されたら、それだけでもとっても危ない。それで警察に知り合いの特徴を伝えて手配してもらおうと思いましたが、手がかりは少ないし、現在どこにいるかも定かではありません。目の前で殺人があったとか、強盗が店を襲っている訳でもないので、日本の110に当たる117に電話しても、多分そのまま届け出が机の上に放置されるだけのような気もします。どこに電話すればいいんだろう?

エドは国家警察のジェネラルを知っている友人に助けてもらうことにしました。ただ睡眠薬強盗程度にジェネラルを頼ることもないので彼のマニラ市の警察署の知り合いに直接話してもらいます。そして届けを出すためマニラの警察署に向かう途中、エドの知り合いの人相・風体・特徴を伝え緊急配備してもらいました。「エドの知り合いを捜しに警官達が街に展開したよ。」と聞いて少しほっとしますが、エドはこの国の警官をやっぱりあんまり信用してないので、心の底からは安心できません。大体今マニラ市にいるかは分からないのだし。

そんなことを考えていたら、家からの電話がかかってきました。「今タクシーで帰ってきたよ…。」警察にもその旨を伝えてもらい、エドは友人にお礼をしようとしましたが彼は絶対受け取りませんでした。睡眠薬強盗みたいなとんでもない奴らもいれば、彼みたいなフィリピン人もいる。そのことが少し嬉しいエドなのでした。

結局被害は携帯電話と現金だけで済んだのですが、被害者は翌日一日ほとんど寝ていたので詳しいことが聞けたのは事件の2日後。被害届もそれから出しに行きました。大使館によれば被害は月に1〜2件あるらしいのですが、被害届を出さなかったり大使館に届けずに帰国するケースも多いと思うので、実際はもっと多いのかも知れません。そうそう、睡眠薬強盗はその使用する薬の名前から「ATIVAN」とも呼ばれています。皆様も来比の際は十分にご注意下さい。

'06年02月20日(月)



マニラ絵日記TOP この日記の先頭